【働きたい障害児ママ】 働けない理由は「働く気がない」からじゃない!(調査から見える就労の現実)
- 6月9日
- 読了時間: 6分

障害児を育てながら働くこと。
このテーマになると、どうしても
「本人のやる気」「スキル不足」「時間の使い方」
の話になりがちです。
でも、本当にそうでしょうか。
働きたい気持ちはある。 過去に仕事をしていた経験もある。
それでも、今すぐ働くことが難しい。
そんな障害児ママは少なくありません。
実際に、昭和女子大学現代ビジネス研究所 2021年度紀要に掲載された、
障害児の母親の就労について、具体的な数字が示されています。
※2021年6月〜7月に、
東京都立特別支援学校に在籍する児童・生徒の母親を対象に行われたもの
■障害児の母親の就業率は55.3%
この調査によると、障害児の母親の就業率は55.3%でした。
一方で、厚労省の調査では、小学4年生の子どもの母親の就業率は77.0%とされています。
対象が完全に同じではないため、単純比較には注意が必要です。
それでも、障害児を育てる母親の就業率が低い傾向にあることは、
この調査から読み取ることができます。
さらに注目したいのは、働いていないママのうち71.7%に就労希望があったという点です。
つまり、働いていない理由は、
「働きたくないから」
ではありません。
働きたい。でも、働きにくい。
ここを見落としてはいけない事実だと考えています。
■ 働けない理由は、本人の問題だけ?
障害児ママが働くとき、壁になるのは履歴書のブランクだけではありません。
毎日の暮らしそのものが、働き方に直結します。
例えば!
通院がある。子どもの体調が不安定な日がある。
夜間のケアがある。登校が安定しない。
学校で校内待機や付き添いを求められることがある。 特に医療的ケア児の場合は、
放課後等デイサービスの利用時間だけでは、
フルタイム勤務だけだは到底足りません。
こうした問題は、障害の母親だけの努力で解決するのは難しい。
この調査でも、未就労者と有意に関連があった項目として、
医療的ケア、夜間ケア、2週間に1回以上の通院、
体調または情緒の不安定さ、校内待機や付き添い要請などが挙げられています。
つまり、障害児ママの就労は、本人の能力だけで決まるものではありません。
子どもの状態。学校や福祉サービスの体制。
家族の協力。母親自身の体力。
働ける時間帯。働ける職種。
こうしたことが全部!つながっています。
私が娘を育てていた2016年当時から比較すると
格段にサービスは増えているとはいえ、
障害児を持つ母親が働きやすい環境は、まだ十分に整っていません。
■「預け先がある」だけでは足りない
子どもが放課後等デイサービスを利用していても、
それだけで仕事が安定するとは限りません。
例えば放デイは、保育園や学童のように、
親の就労を支援することを主な目的とした制度ではありません。
子ども一人ひとりの特性に合わせた療育(発達支援)を提供し、
社会生活への適応を促進することを最大の目的としています。
たとえば、子どもが朝から夕方まで安定して預けられるなら、 働き方の選択肢は広がります。
でも、実際にはそう簡単ではありません。
事業所によっては、学校休業日の開所時間が短いところもあります。
送迎の時間。体調不良による欠席。
急な呼び出し。サービス利用の制約。
子どもに合う事業所が見つからない問題。
こうした現実があります。
「預け先があるかどうか」だけではなく、
「何時から何時まで働けるのか」
「急な変更に誰が対応するのか」
「子どもの状態が崩れたときに仕事をどう調整するのか」
まで考えなければ、障害児ママの働き方は変わりません。
■フルタイムが難しいのは、能力不足のせい?
この調査では、就労者の勤務体系の内訳として、
フルタイムが24.7%、パートタイムが30.2%でした。
障害児ママがパートタイムを選ぶ背景には、
単に「短時間で働きたい」という希望だけではなく、生活上の制約があります。
子どもの通院がある。
学校や施設の時間に合わせる必要がある。
子どもが一人で留守番できない。
夜間のケアで睡眠が不足する。
家事やきょうだい児のこともある。
この状態で、毎日決まった時間に出勤し、
急な欠勤ができない仕事を続けるのは現実的ではありません。
だからこそ、障害児ママの働き方を考えるときには、
「何の仕事をするか」
だけでは足りません。
その前に、
「今の生活で、どれくらいの時間なら働けるのか」
「どんな働き方なら崩れにくいのか」
「家族やサービスに何を頼めるのか」
を見える化する必要があります。
■必要なのは「がんばれ」ではなく、働ける形を考える支援
障害児ママに必要なのは、精神論ではありません。
「がんばればできる」
「時間は作るもの」
「在宅ならできるはず」
こうした言葉では、現実は変わりません。
必要なのは、暮らしの条件を整理したうえで、働ける形を一緒に考えることです。
たとえば、
✔ 週に何時間なら動けるのか。
✔ 通院や送迎を含めると、使える時間はどれくらい残るのか。
✔ 体調不良の日に代替できる方法はあるのか。
✔ 家族に頼めることは何か。
✔ 在宅でできる仕事なら、どの作業から始められるのか。
✔ 収入を急がず、まず経験を作る段階なのか。
ここまで具体的に考えて、はじめて「自分に合う働き方」が見えてきます。
■障害児ママの就労は、大きな社会課題の1つ
障害児ママが働けないことは、個人だけの問題ではありません。
母親の収入が減る。世帯収入が下がる。
キャリアが途切れる。社会との接点が減る。
将来への不安が大きくなる。
そして何より、
「働きたいのに働けない」
という状態が続くことは、本人の自己肯定感にも影響します。
この調査で見えるのは、障害児ママの多くが、
働く意欲を失っているわけではないということです。
働きたい。でも、子どものケアや生活の現実の中で、
どう働けばいいのかわからない。
だからこそ、支援の出発点は、求人紹介だけではありません。
まず必要なのは、生活とケアを含めて、働き方を整理することだと
私は考えています。
■働きたい障害児ママに寄り添ったサポートを
働きたい障害児ママに必要なこと、
「もっとがんばろう」ではなく、
「今の暮らしの中で、どんな働き方なら続けられるか」
を一緒に考えることです。
働き方は、仕事だけで決まりません。
暮らしの設計から、働き方を考える。
障害児ママが自分に合う働き方を見つけるために、 心のサポートからゆっくりはじめる。
ケアママワークスではここを大切にしていきたいと考えています。
【出典】
美浦幸子「障害児の母親の就労状況と就労に関連する要因」
昭和女子大学現代ビジネス研究所 2021年度紀要・研究ノート